導入事例 5軸NCルータの心出し調整を実施|劣化した5軸加工精度が向上(兵庫県)

兵庫県のS社で、門型5軸NCルータの5軸心出し調整を実施しました。今回の調整では、自動計測用のタッチプローブを使用せずに、ダイヤルゲージと基準球を使って旋回中心を計測しました。

■お客様:兵庫県S社
■業種:木型/モデル製造
■設備機械:SHINX製50ZXV型 5軸NCルータ
■制御装置:FANUC Series 18i-MB5
■導入時期:2017年9月

既存設備の精度を向上できるか

兵庫県に本社工場を置くS社では、航空機、自動車、船舶等様々な製品の木型/モデルを5軸NCルータで削り出しています。近年、機械部品や金型の高精度化の要求に対応するため、新規の加工設備の導入を検討されていましたが、数千万円する設備導入の前に、既存設備を再調整して精度を向上できるか試みました。
今回の調整以前に既に機械メーカによる調整が行われていましたが、5軸割出し加工のワーク精度は0.3mm程度でした。これを0.1mm以下、可能であれば0.05mm程度に低減することを目標として、調整を行いました。

タッチプローブを使わずに調整

5軸心出しでは、タッチプローブと基準球を用いて自動で計測する方法があります。この自動5軸心出し計測は短時間で精度の高い計測が可能で、誰でも何時でも再計測ができ、継続的に精度を維持することが可能です。しかし今回の機械にはタッチプローブが装備されていないため、ダイヤルゲージを使って手動で旋回中心を測定し、5軸心出しの効果を確認することにしました。

第一期調整|改善するも目標値は満足せず

まず現状の誤差を測定します。5軸割出時の工具先端点位置誤差は最大0.36mmでした。まず傾斜軸(A軸)と回転軸(B軸)の原点調整、次に傾斜軸(A軸)と回転軸(B軸)の旋回中心を計測し、NCパラメータに設定します。

旋回中心座標をNCパラメータに設定

再度誤差を測定します。最大誤差は0.17mmと改善はしたものの、目標値を満足できませんでした。測定データを観察すると回転軸(B軸)の回転に伴って、工具先端点の位置がZ軸方向に0.17mm程度変位していました。B軸はZ軸周りの軸なので、B軸が回転してもZ軸の位置は変化しないはずです。これはB軸ユニットの取り付けがX-Y平面に対して傾いていることを示しています。

第二期調整|5軸ユニットの取り付け調整の結果なんとか目標値を達成

前回の調整の結果、誤差を低減するためには、B軸ユニットの取り付け調整が必要であることが分かりました。そこで作業日程を改めて再調整を実施しました。

工具を傾斜, 回転させる5軸ユニット

まずB軸ユニットの傾きを調整して、Z軸方向の位置の変化が0.05mm以下になるように調整します。次に傾斜軸(A軸)と回転軸(B軸)の原点調整、そして旋回中心を計測し、NCパラメータに設定します。誤差を測定すると、最大誤差は0.13mmで、今度の傾向はA軸(Y軸周りの傾斜軸)ユニットの傾きを示しました。
“ここまでやったのだから、やれることは全部やろう”ということで、A軸ユニットの取り付けを調整して0.09mmとなり、なんとか目標値を達成しました。全4日間の作業でした。テーブル上面のセルフカットも実施し、平面度を確保しました。

テーブル上面のセルフカット

実加工テスト|5軸割出加工での段差は0.06mm

最後にテストワークで実際の加工を行っていただきました。工具先端点制御指令を使って5姿勢での加工を行ったときの段差は0.06mmでした。

5軸ヘッドを使った加工

作業を終えて

お客様の担当の方は、誤差目標値0.1mmをなかなか達成できなかった時でも、“まだ出来ることがあるのだから、全部やってみよう”と最後まで妥協をされない方でした。この様な妥協しない姿勢の積み重ねで、品質が確保されているのだと思いました。



※ここに示す数値は実績値の一例です。マクロプログラム導入による精度保証はいたしません。

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