導入事例 ボール計測システムを導入|5軸加工精度を向上させて、金型製作の納期を短縮(沖縄県)

沖縄県で金型の製作と研究をしているM社にボール計測5軸心出しマクロを導入いただきました。

■所在地:沖縄県うるま市
■導入時期:2016年12月

金型製作の納期を短縮したい

金型の製作には時間がかかります。それは金型用の高硬度材をボールエンドミルで少しずつ削り出す加工に時間がかかるからですが、特に5軸加工の場合には仕上精度調整にも多くの時間を要します。

5軸加工機でワーク(または工具)の姿勢を変えて加工する場合、ワーク姿勢毎の加工部位にずれが生じます。このずれ量を3次元測定機等を用いて測定し、そのデータを基に修正加工を行います。この測定と加工の手順を繰り返して必要な精度を確保します。この精度調整の工数を最小にするために、今回ボール計測システムを導入し、5軸加工の誤差を最小にするのがねらいです。

5軸加工精度を向上させ金型製作の工数を削減する

5軸加工の精度を向上させるために2段階の手順を踏みます。1つ目は旋回中心計測、2つ目はデータベース誤差補正です。

<旋回中心計測>

旋回中心座標が5軸加工精度の要であるのは明白ですが、その測定は従来からテストバーとダイヤルゲージを用いることがほとんどです。この方法は手間がかかるだけでなく、作業者の技能によって測定値に差が出ることもあります。
この旋回中心計測をタッチプローブと基準球を用いて自動化することで、高精度かつ短時間で行えるようにします。 工具先端点制御や傾斜面加工指令などの5軸機能は旋回中心座標が正確にパラメータ設定されていることが前提であるにも関わらず、実際の測定はユーザ任せになっていて、機械設置時のデータが何年も見直されていないことも多く見られます。

<データベース誤差補正>

旋回中心座標が正確であれば、旋回軸を割出した時のワーク座標も正確に算出できるはずですが、実際には理論通りにならないことがあります。例えば「A軸が-90degのとき、X軸方向に0.05mmずれる」という様な機械毎の傾向が現れることがあります。この傾向をA軸の割出角度毎に測定して記録します。これを誤差データベースと呼びます。そしてこの誤差データベースを利用して「A軸が-90degのとき、X軸を0.05mmもどす」という様に補正することで加工精度を向上させるのです。

導入作業

日新工機製5軸マシニングセンタMAX 710iにMARPOSS製タッチプローブと基準ボールを取り付け、マクロプログラムをインストールします。

既設機械にマクロプログラムを追加する場合、既に使用しているマクロ変数やプログラム等とデータ干渉しないように、実機に合わせたプログラムを作成します。
また客先毎の機械の使い方や加工プログラムに合わせてプログラムを修正します。マクロプログラムは合計で4000行を超える複雑なプログラムです。これらを注意深くデバグします。そして安定した測定結果が得られるかどうか確認します。完成した旋回中心計測マクロの計測時間は約15分でした。

旋回中心計測で良好な精度が得られた

旋回中心計測直後の精度測定では、ボール計測の最大誤差は0.014mmと良い精度が得られました。さらに誤差データベースを投入して再度精度測定を行ったところ、最大誤差0.004mmと非常に良い結果が得られました。実際の加工精度の向上が期待できます。

5軸テーブル割出時のボール位置 理論値(左)と実測値(右) 0.005mm-0.010mmの差がある

座標変換マクロでワーク心出しの工数も削減

ボール計測マクロの導入で精度が向上しただけでなく、ワーク心出し作業も楽になりました。今までは加工姿勢毎に心出しをしてワーク原点を設定していましたが、今回座標変換マクロを導入したことで、作業しやすい正面のワーク心出しをするだけで割出し加工のワーク原点は自動計算されるようになり、段取り工数の削減もできるようになりました。

導入作業を終えて

昼休みに近所の弁当屋さんに置いてあった魚の形の醤油差し。30cm近くある巨大なものです。I氏がこれを見てひとこと「ダイレクトブローだな」。ダイレクトブロー成型とはプラスチック成型の一種のこと。頭の中は金型のことでいっぱいなのでしょうね。



こんな加工もできるようです。



※ここに示す数値は実績値の一例です。マクロプログラム導入による精度保証はいたしません。

ボール計測マクロ、5軸マシニングセンタの心出し、誤差補正でお困りの方は、お電話またはフォームからお問い合わせください。

お急ぎの方、文章では説明しにくい、何をどう説明すれば良いか分からないという方はお電話がおすすめです。「ウェブで見たボール計測について聞きたい」と言っていただければOKです。精度不良、工数短縮でお困りの方、お問い合わせお待ちしております。